「筋力不足」という誤解

「筋力不足」という誤解

「運動しているのになあ…?」「筋トレで鍛えているのになあ…?」といったお悩み…

世間一般では、不調の原因は「筋力不足」だとよく言われます。確かに、加齢や運動不足で筋力が低下することはあります。

 

「筋滑走」「関節滑走」「神経伝達」

しかし…不調の真の原因は、筋力が足りないからではなく、本当に必要なのは、「筋滑走」「関節滑走」「神経伝達」かもしれません。

つまり、それらが円滑に動くようになれば、

あなたの身体は本来持つ能力を最大限に発揮し、

筋力はほぼ必要がない状態になるのではないかと…。

 

筋力に頼る前に考えるべき「滑り」の質

もし、自動車がブレーキを踏みながらアクセルを踏んでいる状態だったらどうでしょう?

どんなにエンジン(筋力)が強くても、スムーズに走ることはできないですよね。

人間の身体も全く同じなのかもしれません。

 

 1. 筋滑走(きんかっそう):筋肉の摩擦をなくす

筋肉は、単独で存在するのではなく、筋膜という薄い膜に包まれ、

いくつもの層となって重なり合っています。

身体を動かすとき、これらの層がシルクのように滑らかに「滑り合う」必要があります。

これが筋滑走です。

デスクワークや悪い姿勢、使いすぎなどでこの滑りが悪くなると、筋肉同士が癒着し、摩擦を起こします。

これが「張り」や「こり」、そして痛みの直接的な原因。

滑走が悪い状態で筋トレをしても、摩擦が増えるだけで、

より一層身体の動きを制限し、かえって不調を悪化させてしまうことさえ…。

 

2. 関節滑走(かんせつかっそう):動きの「遊び」を回復させる

関節は、骨と骨が接する部分です。

関節が動くとき、骨の表面同士も「滑り(滑走)」ながら「転がる(転がり)」ことで、大きな動きを生み出します。

この関節滑走が、動きの「遊び」を作り出し、衝撃を吸収するクッションの役割も担います。

この滑りが悪くなると、関節の可動域が狭くなるだけでなく、

関節の端と端がぶつかり合うようになり、痛みや炎症を引き起こします。

また、一つの関節の滑りが悪いと、その負担を別の関節が無理にカバーしようとするため、全身のバランスが崩れる連鎖的な問題に発展します。

 

3. 神経伝達(しんけいでんたつ):司令塔の正確な信号

筋肉や関節を動かすのは、脳から脊髄を通じて送られる神経信号です。

これは、身体の「司令塔」からの指示であり、非常に重要です。

しかし、背骨や骨盤のわずかな歪み、硬くなった筋肉や筋膜が神経を圧迫したり、

過度に引っ張ったりすることで、この神経伝達の信号にエラーが生じます。

エラーが起きた状態では、

「力を入れようとしても入らない(筋力不足のように感じる)」

「力を抜きなさいという指示が出せない(常に緊張している)」

といった誤作動が起こります。

これは筋力自体の問題ではなく、信号の質の低下となります。

 

筋力が「ほぼ必要ない」状態とは?

この「筋滑走」「関節滑走」「神経伝達」の3つを徹底的に改善し、

身体の動きをゼロベース(ニュートラル)に戻すことです。

滑りが悪かったモーターに、最高級のオイルを注し、

絡まっていたコードを綺麗に整理するイメージです。

滑らかに動く筋肉、遊びを取り戻した関節、正確な指令を出す神経。

この状態が整えば、あなたの身体は、日常生活を送る上で最適な、

そして無理のない筋力を自動的かつ効率的に発揮できるようになります。

つまり、無駄な力みが消え、身体の構造と機能だけで十分に身体を支え、

動かすことができるようになるのです。

これが「筋力はほぼ必要がない」状態みたいなイメージです。